[参考書レシピによる基本のイチゴジャム] (2016/5/17)
 
ジャムを作り始めた頃は色々なレシピを参考にしていましたが
どう作ってもジャムらしきものは出来上がるのでいつの頃からか
我流に走るようになってしまっていました。しかし我流に走りすぎれば
もっと高品質な品物を効率よく安定して作るやり方があっても
気がつかず、ジャム作りの幅が狭まってしまうかもしれません。
そこで今回は手持ちの書籍の中から農文協発行の
「食品加工シリーズ 8 ジャム」に記載されているレシピに沿って
イチゴジャムを作ってみることにしました。
 
この書籍は家庭向けのレシピ本とは趣の異なる農家をはじめとした
生産者向けの本です。生産した作物を加工して販売したいニーズに
合わせたものでただレシピを紹介するだけでなく原材料の性質や
科学的な解説、商品としての生産加工にあたっての施設や機材、
食品を生産・加工して販売するという事に対しての基本的な心構えなど
多角的で実際的な内容が多数記載されています。2004年に初版が
発行されましたが今でも十分役立つ内容と思います。


材料。イチゴはヘタをとって約280グラム。グラニュー糖はその半量の
140グラム。左手前は15グラムの水でしっかり溶かした0.9グラムの
ペクチン、右手前は同じく0.9グラムのクエン酸を15グラムの水に
溶かしたもの。レシピではペクチンは砂糖の2割ほどを取り分けて
これにまぶすように混ぜるのですが昔そのやり方でダマになったような
記憶があったのでここだけはレシピと変えてみました。他はレシピ通り
ですがイチゴの量に合わせて他の材料の量も減らしてあります。


イチゴは小粒の半分くらいにすべての大きさを合わせて切ります。
これにイチゴの20%の重量の水を加えて中火で加熱します。


沸騰したら火をやや弱めて10分加熱し果肉を軟らかくします。
アクは取ります。


10分炊きました。果実から出た水分でこんな感じです。


火を一旦落とすとこんな感じ。ここへ砂糖の80%を投入して
焦がさないよう気をつけながら基本的には強火でさらに
10分ほど炊きます。


10分炊いたら残った砂糖と水溶きしたペクチン(レシピでは
ペクチンを混ぜた砂糖)を投入。再度沸騰したら水で溶いたクエン酸を
投入して適切な濃度になるまで炊いて完成です。アクはその都度
取ってやります。


出来ました。砂糖を入れてから完成まで30分くらいです。
炊く時間が長くなると風味が飛ぶので出来るだけ炊く時間は
短くしたいとあったので強火で炊いたのですが完成間近の
濃度になると急に糖分が熱で飴(フォンダン?)化したりさらには
香ばしい匂いを放って茶色っぽくなるカラメル化を起こしやすくなるので
炊きあがりを見極めるのはなかなか難しいです。


瓶に移しました。約230グラムです。果実は残っていますが
崩れて無くなった部分も少なくない感じです。この固形分として
残った果実は砂糖の吸水作用のためかやや固く締まっていて
口当たりがあまりよくありません。味については好きずきですが
個人的には少し濃厚すぎるかなと感じます。先に書いた煮詰まり方
ですがやはりワンタイミング遅かった感じで鍋の底に冷えると固まる
飴になったジャムが残ったり瓶に移した最後の方の部分(鍋肌に
触れていた液状の部分)は固めになってしまっていました。
香りに関してはギリギリ変な香ばしさは感じませんでした。


上から見て。細かい泡はアクか泡か判断が難しいです。
煮詰まってしまって泡も潰れづらいということもあるでしょう。
全体にはカチカチということはないのですがやはり飴化が
始まってしまって粘つきが気になる感じです。

考察します。
 
・最初に砂糖無しで炊くのは砂糖を加えると果実から水分が吸い出されて
固く締まってしまうからですが後から砂糖を加えてもやはり多少は果実が
固くなるので最初の水煮の段階で十分軟らかくしておき砂糖を加えてからは
濃度のコントロール程度と考えた方が良さそうです。ペクチンは高温で熱すると
ゲル化する作用が失われるともありこの観点でもペクチン投入後の加熱は
出来るだけ短くしたいところですがある程度高温にしないとゲル化作用が
十分に生じないともあるので加減が必要そう。
 
・書籍のレシピでは形の残った果実と液状(ゲル状)部分が同居した状態の
ジャムを目指しておりペクチンの添加はおそらくこのゲル状部分の
ゲル化を確実にするためと推測されます。私好みの固形分のないジャムを
作る場合は煮詰めるだけでも濃度は確保できそうですしその場合ペクチンの
添加は不要かもしれません。
 
・試食すると食感では種が多くてうるさく感じます。やはりこれは個人的には
取り除きたいところ。水煮で軟らかくした果実を漉し器で濾すのがやはり必要
かと感じます。種と同時にある程度の果肉も失われますし手間はかかりますが
口当たりの向上のためにはやむを得ません。
 
・炊きあがり直前が最大のポイント。糖分を飴化させずに濃度を確保するには
ジャムの急激な温度上昇を避ける必要があります。今回も火を落としたにも
関わらずしばらくブクブクと沸騰が続きその間にも自分自身の余熱で糖分の
変質が進行したように感じられます。水分が多ければこれが蒸発することで
急激な温度上昇が抑えられるのでしょうが水分が減ればその効果がなくなり
高温になりやすくなるのは容易に想像できるところです。香りが飛ぶのは
心配ですが炊きあがり直前こそ焦らずに火力調節は弱めに行きたいものです。
また炊く時間を短くしたいなら当然無駄な水分は加えない方が良いわけで
今回ペクチンを水に溶いたのは良くないやり方だったかもしれません。
焦がさずに加熱する自信があれば一番最初に加える水分も減らせるかも
しれません。
 
・とはいえ炊きあがり直前に温度が上がりすぎたと思ったら火を止めると同時に
少量の水を速やかに加えるべきだったと反省します。そうしておけばそれ以上の
飴化や煮詰まりすぎの進行を抑制できたかもしれません。
 
…という感じです。いちごの季節ももう終わりですがまだ安く入手できる機会があれば
今度は水煮→裏ごしで砂糖を加えたら素早く仕上げるというのを試してみたいと
思います。またステンレス鍋に較べて鍋自体の温度変化の緩やかな土鍋を使えば
火力の調節が楽になるかもしれません。

〈5/20追加〉
その後上記のアイデアに従い下煮した後に裏ごしで種を濾したジャムを
試作したので以下に記事を追加。
細かく切ったイチゴを水を加えず10分煮て漉し器で裏ごし。土鍋に移して
弱火で煮立つまで加熱、ヘタを取った苺の重量の40%のグラニュー糖を加え
全体が馴染んでそれなりに濃度が付いてきたらテキストと同じ割合で
作った適量のクエン酸の水溶液を加えて濃度を確認したら完成。
濾した直後の段階で既に結構とろみが付いており以後の加熱は終始弱火。
ペクチンは加えません。


濾した種。多少根気は要りますが煮てあるので濾すのに力は
要りません。種が全然入っていないのは寂しいならこの中から
適当な量を鍋に戻しても良いでしょう。


完成品。ヘタを取ったイチゴの重量の2/3の量になりました。
画像で約170グラム。白く点々と見えるのは気泡です。
ジャム本体がおいしくできるようになればこうした気泡やアクを
完全に取るには、ということが課題になるかもしれません。