[龍の末裔(ダード・ライ・ラグン)] (2021/10/2)

※すべての画像はクリックすると別窓で大きな画像が見られます。

長谷川裕一氏による長編SFコミック「マップス」。
雑誌連載時に発行された学研版の単行本の本編だけ
(他に外伝、続編などがある)で17巻を数える大作
です。本作には翼を広げた人物像(つまり天使)を
思わせるリープタイプと呼ばれる独特の宇宙船の
一群が登場するのですがその亜流というか鬼っ子
のような形で登場するのが「龍の末裔」こと
ダード・ライ・ラグン号です。全体にはリープ
タイプを踏襲した大きく翼を広げた姿ですが
各部は人ではなく龍のそれであり戦闘力も主人公
サイドを大いに苦しめるものを持っています。
物語中での具体的な活躍や役割については大いに
複雑な物があるので割愛しますが魅力的に描かれた
キャラクターであることは間違いありません。

さてこのページの品物はというと、作品中幾度か
モデルチェンジしたダード・ライ・ラグン号のうち
「中期型」と呼ばれるタイプの機体をペーパー
クラフトで表現した品物です。これは私が企画や
設計を行なったものではなく1994年に同人サークル
「ガッハ商会」が発行した同人ペーパークラフト
キットです。長い間私の手元で眠っていたものを
2020年秋頃にようやく製作、完成させました。
キットというくらいで組み立て説明の冊子と
切り出して組立てる印刷済みの厚手のケント紙
(白・紺の二色)の冊子のセットなのですが完成時
全幅50センチという少々大きなサイズなのと
冊子そのものに手を付けてしまうと製作に失敗
した場合オリジナルが消失してしまうという問題が
あるので元々A4サイズだった冊子を約70%の
A5サイズにコピー機で縮小、これを下図にして
厚手の白ケント紙を切り出して製作しました。
組み立て説明の冊子によると設計者もこの品物の
設計と製作にはかなりの試行錯誤があったようで
冊子の形に落ち着いてもなお不完全な部分があり
追加の説明書での組み立て方の変更指示や部品
下絵の追加がなされています。それだけではなく
実際に製作を始めてみると部品番号が違っていたり
上手く組立てられない部分が各所にあるなど
製作には作り手の私自身の工夫も少なからず
必要でした。率直に言ってなかなか苦労しましたが
形状そのものはとても魅力的だし原作コミックの
複雑な形状をペーパークラフトとして組立てられる
程度にアレンジしていくセンスも大したものと感じ
られます。今なら3Dソフトが充実していますから
低ポリゴンでモデリングして自動的に分割、展開
する手軽なアプリもある訳ですが、この時代は
おそらくまだそこまで一般的ではなく(六角大王の
初版が発売されたのは1992年とのことなので
有ることはあったのかもしれませんが)この品物も
描線から判断して完全に手作業で設計されて
いるのが明白であり設計者の熱意や根気、あの時代
ならではのアマチュアのクラフトマンシップを
感じさせられます。

画像の品物についてですが、用紙は前述の通り
厚手の白ケント紙、接着は速乾タイプの木工用
ボンドを使用しました。


前から。全幅35センチ程度。大まかには5つの
ブロックに分解できます。接着した方がもちろん
安定するのですが収納の効率を考慮しました。
オリジナルは外観部に濃紺のケント紙を用いて
胸部や背部に黒色や銀色でディテールを作図して
あるのですが、こうして真っ白い紙で作っても
形状が引き立って趣があると思います。



下半身の脇腹あたりには3対のトゲトゲが
付くのですが製作誤差の累積により接着する
ことができなくなりやむなく省略しました。



正面上方より俯瞰。後頭部はオリジナルより
のりしろを細かく分割して滑らかなラインに
なるよう工夫しました。口にくわえた槍状の
「スターティア」は薄紙やプラ材で作ればラク
だったのでしょうがそこはこだわってケント紙を
水に浸して柔らかくして巻いて作りました。



側面。後頭部もですがこの喉元の曲線も個人的な
こだわりどころです。


 
スタンドはガンプラ向けの物を使用。品物に
馴染むよう色は白を選択。



背面。オリジナルのキットでは前述の通り原作の
メカディテールがみっちり作図されていますが
本作ではそれは省略したので何ともシンプルな
見た目になっています。



真後ろ。後頭部と背中の継ぎ目の逆台形の部分は
頭・右翼・左翼・本体を貫く要のパーツです。
分解・組み立てできるように私が追加したパーツで
これを引き抜くと全体がバラバラになります。