[デコマスラボさん オリジナルキット] (2015/9/1)

※作品の画像はクリックすると別窓で若干大きな画像が見られます。

2015年夏のワンダーフェスティバルで購入したデコマスラボさんの
オリジナルキットです。キットは台座役の造形品とその上に立つ共通の
人物像のセットという構成で台座には何種類かあり気に入ったパーツの
入った物を選択できるという内容だったのですが、購入時に複製状態が
良くなかったというパーツを一つサービスして下さったので今回はそれを
単独で仕上げてみました。特に塗装色の指示はなく自由に塗って下さいと
いうことだったのでイマジネーションを広げて普段やらないことを自由に
盛り込んでできるだけルーチンな作業に逃げないように心がけて製作しました。

この動物は何なのか?というところから
入っていきました。細長くてくねった首は
首長竜のようですが鼻面は哺乳類を思わせます。
水棲哺乳類なのかと考えましたが耳を付けると
犬のような純粋な陸棲の哺乳類にも見えますし
結局首長竜と水棲哺乳類の中間の生き物を
ディフォルメしたものと解釈することにしました。

シチュエーションは2種類考えました。
夜の湖面から首を出したUMAの濡れた肌に
夜空や湖面など周囲の景色が映っていると
いうものとバケツの中からスケールを無視した
恐竜が首を出しているというものです。
結局品物はその両方のイメージを取り入れた
ものになりました。

バケツから恐竜というイメージに特に
独自性はありません。遠い海から来た
COOとか、ドラえもんにも同じような
シチュエーションがあったはずです。
でも製作にあたって湖面を作ろうとすると
周囲を大きくしないと湖の感じが出ず
やたらと大きな品物になるかコンパクトな
代わりに狭苦しい品物になりそうだったのに対し
これだとオブジェとしてまとめやすいという
考えが明確にありました。

キットの造形がディフォルメを加えた
ものだったのでリアルに仕上げるより
ファンタジックなイラストのような
雰囲気が良いと思いました。
それで一番面積の広い後頭部に
大きめの月や星を描き込みました。
イメージ検討時はこのくらいで
適当と感じましたが実際に描くと
色が鮮やかなこともあってちょっと
うるさい感じです。とはいえあまり
小さくしても存在感が無いし
イラストチックなら嘘くさくてもはっきりした
色の方が良いし、加減が難しい所です。

月はポンチで丸く抜いたマスキングテープを貼って
きれいに仕上げるつもりでしたがポンチの切れ味が
悪いのかどうしてもエッジが汚く結局手で修整して
ガタガタになりクヤシイの一言です。また下地の
足付けが不十分で塗膜がマスキングテープにすら
耐えられずに剥がれてしまい一時は絶望的な
気持ちになりましたがどうにか修整できました。
キット表面の艶はスーパークリヤーVを吹き重ねて
付けています。

パーツの気泡はサフレスで仕上げることを考慮して
アルテコで埋めました。しかし結局色の薄い部分も
不透明なクリーム色で下塗りしてしまったので
あまり関係なかった感じです。塗装は緑がかった
湖面の青、夜空の黒、海棲哺乳類っぽいイメージの
青などがグラデーションになるようにと考えました。
透明水彩のように薄い色を重ねる手法で表現
したかったのですがどうしても塗料の粒子が
粗くなってしまってうまく行かず結局不透明水彩的と
いうか模型で迷彩の境目をぼかすようないつもの
やり方になってしまったのは残念なところです。

精霊のようなもの?という違和感を出そうと
目は金と銀を混ぜて塗りましたが、これは
むしろ機械的で良くなかったかも。かといって
瞳を描くと生き物感が強くなりすぎるか
マンガ的な表情になりそうでこれまた
難しい感じです。こういうところはためらわず
人様の作品ではどう仕上げているかを
調べて参考にするという手を用いても
良かったかもしれません。

お腹の側は割と気に入った感じに
できました。鍋は100円ショップで買った
小物。キットの下面に鍋の内径に合わせた
プラ板を貼り付けて塗装を済ませてから
はめ込み、着色した二液型のエポキシ樹脂を
流しました。なかなか良い質感の水面に
仕上がったと思います。

検討中の画像。
鍋はどう仕上げたものかと最後まで
考えが定まらなかったのですが
下塗りのつもりで吹いた黒が思いのほか
良い感じだったのでそれで決まりに
しました。内面は水の色に合わせた
青みがかったグレーにしています。

スケッチと呼ぶのもおこがましいメモ書き。
いいかげんな似顔絵描きくらいの経験なら
いざしらず、スケッチなんていうことは教本を
眺めたことならあるという程度。イメージを
二次元のレベルで明確にするという狙いの他に
イラストレーターさんやアニメーターさんが
よく描くササッと描いた割には魅力的な
カットのようなのを私も描けたらな〜というような
可愛らしい野望も。右下のは小学生の頃
使っていた学童用の色鉛筆を引っ張り出してきて
色を付けたもの。

最後にアクリル絵の具で水彩っぽく色を付けたのを
描きました。下の方がいい加減な形なのは絵として
成り立たせる必要は無いのだからと手を抜いたせい…。
これだと目の金色も大きな月も不自然ではないですが
イラストと立体、二次元と三次元ではおのずと
見え方は全然異なってしまうのでした。ちなみに
スケッチすらやったことがないくらいですから
アクリル絵の具を扱うのも初めてです。というか
絵を描く絵の具は学童用の絵の具かポスターカラー
くらいしか触ったことがない気がします。持っていたと
いうだけなら透明水彩やアクリルガッシュを買い集めた
こともありましたが使った記憶がありません。
まあ初めて描いてこれならいいんじゃないかなと
大甘の自己評価をしたりします。素人考えではありますが
私のような超初心者なら上手下手より描きたいものが
どれだけあるかとか何枚、何十枚と書き続けられるだけの
モチベーションがあるかとかの方が何かと重要な
気がします。仮にどんなに器用で上手であったとしても
1枚で終わればそれまでなのですから。

今回の製作はキットのオリジナリティに触発されて、これまで無いと決めつけてきた私自身の
イマジネーションを掘り起こすという今までやらなかったことをやる機会になりました。
イラスト的な仕上りを想定するなら二次元のイメージ画を描かねばという考えを
面倒だしやったことがないからと追い払わず、スケッチや水彩画の入門書を図書館や
古書店で探したり、画材店で絵の具や筆を見繕ったり、録画はしたが見ずにしまい込んでいた
テレビの水彩スケッチ講座のDVDを引っ張り出してきたり、それらを手がかりに
上に載せたようなラクガキを描いてみたり。実際の製作では模型用の塗料で模型の塗装を
することになりましたし二次元のイラストでイメージを表現するのと立体を塗装して
イメージを表現するのは大いに違うということを実感したりと技術的な巧拙とは別の点で
うまく行かなかったことも多いのですがこれはある種エキサイティングな経験でもありました。

たった一度の試行でどれだけ自分の中身を掘り起こせたかというのはやはり頼りないものがあります。
こういうことは幾度も繰り返してたくさんのスケッチでもラクガキでも立体でも作り続けてみることが
大切なのだろうと思います。魅力的なものが出てこないなら魅力的なものが出せる自分になるには
どうしたら良いかというアウトプットから自分の中身を改善する方法を検討するという良い逆流を作る
試行もできるかもしれません。まだまだいろいろこうした行為にはエキサイティングな要素が
潜んでいそうです。今回のような試みばかりをやっていることもなかなかできないかもしれませんが
細々とでもこっそりとでも今後も気長に続けていければと思います。そんなことをしているうちに
他の誰とも違う自分だけの創作という境地に至ればなどと夢想するのもまた楽しく感じられます。