[1/24 ミニクーパー(ルパン対複製人間)] (2018/12/23)

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1978年に公開された劇場版「ルパン三世」。正式なタイトルはこれだけですが他のシリーズ作品と紛らわしくないよう
後に色々な副題が付けられて現在は「ルパンVS複製人間」というタイトルでもっとも知られています。
色々な見方のできる作品ですが序盤から終盤まで中だるみのないノンストップアクションムービーであり
全編見どころに事欠きません。それらのうち序盤での目玉のひとつがルパンらのミニクーパーと巨大トレーラーの
カーチェイスですが、トレーラーの幅寄せで崖沿いのハイウェイから空中へはじき飛ばされたルパンのミニクーパーは
なんと路肩から外れて宙ぶらりんになっているガードレール上を片輪走行して危機をしのいで無事に路上に生還して
しまいます。これには当時劇場でスクリーンを見ていた誰もが大笑いしていた記憶があり荒唐無稽ではありますが
非常に痛快で印象深いシーンでした。

そのシーンの模型による再現を試みたのが本作です。ルパンだけではなく、ミニクーパーだけでもない、「映画の
あのシーン」を再現するというのがコンセプトです。キャラクターというものの捉え方というのはそのキャラクターが
作られた経緯により様々でしょうが私にとってはやはり「生きて活躍している世界がある」キャラクターの方が
より生き生きして魅力的に感じられるように思います。アニメのこのシーンもまさに人物、車、状況がセットになって
大きな魅力を発しています。従って作品作りではフィギュア、車、ベースの三点をしっかりと作って組み合わせ
なくてはならず市販キットを普通に組むだけのように簡単には行きませんでした。

フィギュアはエポキシパテを主に用いたフルスクラッチ。フィギュア造形自体ご無沙汰なのと1/35とまでは
言わないまでもこのサイズなので楽々とは行きませんでした。ポーズは本編を参考にはしましたが実車モデルと
組み合わせると不自然ではないかとか室内に手をつくポーズなどではフィッティングがシビアでかえって不自然に
なるのではないかという心配もあり本編とは違うがそれっぽいというポーズで作りました。手などは私の造形の
能力の問題と狭い所に配置することになるので見える部分の見栄えも考えてある程度のディフォルメも
良いだろうということで多少大きくても良しとしました。

車はタミヤの1/24オースチン ミニクーパー 1275S Mk.Iを使用 。アニメに登場するミニクーパーはどの形式なのか
判別が困難なのでこだわりようがない感じです。オースチンと書かれたエンブレムが作画されている以上
オースチンではあるのでしょうがそれ以上は設定が曖昧なのか作画ミスなのか演出上省略したのか
判断不能な部分が多く製作上落としどころに困る所だらけです。とりあえずキットの改造部分としては前面の
グリル部分の形状変更と補助灯の追加、前後のバンパーの形状変更、ドアミラーの追加、右ハンドルを
左ハンドルに変更、ナンバープレートの文字の自作、ボンネットを止めるベルトの自作といった所でしょうか。
しかし本編での作画はカットごとに極めて不安定でディテールも有ったり無かったり、形が違っていたりと
どれが本当なのかさっぱり分からず車という性格上カスタマイズされているという可能性も考慮するともう
何がなにやら…ナンバープレートの文字も2かZか分からないとかゼロなのかオーなのか分からないなどと
いうだけでなくカットによって明らかに違うナンバーだったりナンバープレート自体作画されていなかったりもします。
それら不明部分はすべて勢いでえいっと決めましたので細かいことは見なかったことにして下さい。
カーモデルは最後に真面目に作ったのが17〜8年前のようでほとんど製作ノウハウは失われており
初めて作るのと大差ない状況でした。幸いキットの素性が良いので組立て自体の問題はあまりありませんでしたが
勘どころが分からないので手探りで少しずつ組立てて行かなくてはならず効率は良くありませんでした。
本来ならアニメ寄りということでしなくても良い作業もあったかもしれませんがそこはせっかく滅多に組まない
自動車モデルなので色々調べてお作法通りの作業もしてみました。なおボディの塗装は赤や黒の上に
クリアを重ねてコンパウンドで磨いて保護・艶出し用のコート剤を擦り込んだだけです。ペーパーがけによる
研ぎ出しまではしていませんが最後のコート剤が効いたようで良い艶になりました。あとナンバープレートは
プレート自体はキットのパーツですが文字や背景色部分はインクジェットプリンタ用の転写シートで作りました。
このシートはパーツに貼り付けるための糊シートというのが細かいチェックのパターンで印刷されて
いるのですが貼り付けた後にこのチェックの目が目立ってしまうのでイマイチだったようです。

ベースはガードレールですが、そのまま流用できるパーツが都合良く見付かる訳もなくうまく行くかどうか
半信半疑のまま平たく伸ばしたエポキシパテを丸棒に乗せてRを付けて硬化させ平たいままの帯状の
エポキシパテと貼り付けて製作してみました。形状はどうにかこうにかですがパテなので熱に弱く暖かい場所に
置くと硬化後でも変形しやすく他の手段があるならそちらの方が望ましいと感じます。支柱はプラパイプ等で
製作、こちらは特に問題ありません。あとは台座とガードレールを支える支柱ですが、台座は手元にあった
アガチス材のベースを使用、支柱は浮遊感の演出のためにアクリル丸棒を使用しました。自動車の重量で
ガードレールが変形するのをできるだけ避けるために支柱はタイヤの真下に当る部分に配置しました。
このアクリル支柱はプラ棒を介し真鍮線も用いてガードレールと固定、アクリル支柱と木製台座は二液式の
エポキシ接着剤で接着。強度が心配でしたがどうにか大丈夫のようです。

車とガードレールの固定は構想段階ではタイヤに穴を開けてシャーシまで貫通する固定軸を通そうと考えて
いたのですが、理想的な車やガードレールの角度や位置関係を検討するために後々現物合わせも必要に
なるかもしれないと予想されたうえホイールを固定する実車の複雑な部品構成は力任せにホイールに穴を
開ければ良いという訳には行かず頭を悩ますことになりました。ゴムのタイヤはきれいな開孔が難しそうな反面
魅力的なトレッドパターンを持っているので当初はこのパターンを活かしたままキャスト複製できないかと
考えましたがゴム素材の精密な型取り素材が見付からずホイールの穴開け問題もあって結局不細工では
ありますがシャーシの中央付近に穴を開けてプラパイプをさし、ガードレール側に設置した一回り太い
プラパイプに差し込んで固定することにしました。見た目はイマイチですが危険を冒して手間をかけた割に
仕上りもイマイチというのよりはマシだっただろうと思います。

では以下、画像をたっぷりご覧下さい。

正面から。本編でこの角度に
類似したカットではナンバーは
P20ではなくPZ0に近く見えますが
資料を参考にこの数字に
しました。増設したランプは
紫外線で硬化するクリアレジン
ですがキットのパーツより透明度が
低いうえ変質でもしているのか
気泡が入りやすく使い勝手は
もう一つでした。

このカットがもっとも本編の
イメージに近いです。
ドアミラーは無かったり片側だけ
だったり両側にあったりですが
模型では運転席側だけに
付けました。プラ板や真鍮線による
作り起こしです。

ボンネット止めのベルトは
ホチキスの針と厚手の上質紙で
作りました。ノウハウがなく
この手の小パーツはどう作ったら
良いのか頭を悩ませました。
グリル部分はどういう構造だと
アニメの画のようになるのか
謎だったのですがとりあえず
「そう見える」形に作りました。

固定パイプが目立ちますが
最善の選択だったと信じたい
所です。塗装は銀色のモールや
バンパーなどがアニメでは全く
塗り分けられたカットがないので
赤にしました。一方窓の縁は
しっかりと塗り分けました。

後面はこだわりの無い部分です。
ナンバープレートを照らすランプは
アニメでは下ではなく上に一灯です。
トランクを開けるハンドルは多分
余計ですし給油口を本編通り
片側のみにするなら反対側の
ディテールはそのままでは多分
変です。またオースチンのインレット
マークも余計ではあるのですが
キレイなのでつい貼ってしまいました。

埃も少々付いてはいますが
良い感じの艶が出てその辺は
満足しています。窓ガラスは
開放感が無くなるのと反射で中が
見えづらくなるので入れないことに
しました。アニメでは窓ごしの車内を
モノトーンで彩色することで窓ガラスの
存在を表現している…カットもあるの
ですがこれがどうにも不徹底で
同じシーンなのに統一されていません。

ルーフは取り外せます。
中はこんな感じ。次元は前屈みに
なって天井に手を付いたりして
いるのですがシートに寄りかかって
帽子を押さえるポーズに変更。
五右衛門は多分あぐらをかいて
いるのが正解ですがスペースが
狭くて収まりが悪そうなので
足を組ませました。

全体。浮遊感や緊張感が欲しいので
透明支柱はこのくらいの長さに
しました。

反対側から。
底面ももちろんちゃんと塗ってあります。
キットにはホイルキャップもついていますが
アニメでは未装着なので使いません。

シャーシ。ボンネットは開かない
ようにしてしまったので完成後は
エンジンは見えません。しかし
製作中は完成後にどこがどう見えて
しまうか分からないと思ったので
エンジンもしっかり塗装しました。
室内の塗装は本編の描写と
キットのカラーガイドを参考に
行ないました。

ルパンの手とハンドル、シャーシ
との取付け部の位置合わせは
面倒なポイントでした。足元の
ペダルは位置を合わせきれないと
見て最初から取り付けていません。

フィギュア。いまや1/35の
キャラクターフィギュアすら珍しく
なくなりましたがそれより大きい
とはいえこのサイズを造形したり
塗るのは老眼には大変でした。
人形造形自体久々ですが
良いとまでは言わないまでも
この用途に対してならそんなに
悪い出来ではないと自認しています。

背面はあっさりしたもの。
フィギュア単体を売り物にしようと
いうのであればこの出来では
現在では厳しそうです。ただ現在は
小さいのにやたらと出来が良い
キャラクターフィギュアもありますから
それらを参考にして作り込んでやれば
もう少しは出来も上げられそうに
感じます。

せっかくなので地面に置いた
画像も。

前から。ボンネットのベルトは
よく見ればややおぼつかない
出来ですが雰囲気は悪くない
…と思いたいです。次は釣り用の
板ナマリでも使ってみましょうか。

側面。
ハンドルが右から左に
移動したので細かいですが
ドアハンドルも左右逆にしました。
運転席側のドアハンドルには
カギの差し込み口があるからです。

反対側。
ルパンと五右衛門は
猫背を強調。ポーズ付けは
本編とは異なるものの
良い感じになったのでは。

ルーフを外すと室内が
ぐんと明るくなります。

五右衛門の頭も結構
飛び出ていますね。

上から。
ミニというだけあって車内は
狭いです。後部座席は
出入りしづらそう。

ルパンと五右衛門の目や眉は
筆による描きのみで凹凸表現は
ありません。下地をラッカー系、
目や眉はエナメル系で描いて
溶剤を含ませた筆でチマチマ
調整しました。とても目が
しんどかったです。