[ホイルシールの表面だけを剥いで貼ってみる] (2014/11/27)

研ぎ出しとまでは言わなくても何か艶有りテカテカな物をお手軽に作ってみたいと
思っていたところに目に付いたタミヤの「ミニ四駆くまモンバージョン」。安価でパーツも少なく
ガチな模型と毛色の異なるキャラクターグッズっぽさも気に入って飛びつきました。
期待通りパーティングライン処理などの下地仕上げもラクチンで良かったのですが
さてこれはどうするかと思ったのがドレスアップシールです。シールを貼った状態で
表面を平滑にテカテカに仕上げたかったのですが普通に貼ったシールはかなり厚みがあって
試しに自分でクリアを上掛けしてみてもネットで調べてみても周囲との段差なくキレイに
平らになるようクリアを吹き重ねるのはかなり大変そうです。最初はこのシールをスキャンして
元絵を起こしてデカールを自作と思ったのですが試しに始めてみると結構手間がかかります。
まして銀色の下地や自作デカールでは鬼門の白下地などこのシールならではの面倒が
いろいろあります。様々なノウハウや素材を駆使してそれらをクリアしたとしても最終的に
デカールの重ね貼りで厚みは全然薄くならなかったり仕上りが劣ってしまうようでは
ガッカリです。それで何か良い手はないものかと考えてひとつ試してみようかと
思いついたのがシールの裏面の糊や紙を剥いでいって表面だけを薄く削ぎ取れないかと
いうことでした。このアイデアはビン入り豆板醤などのラベルがこのシールとよく似た
銀下地になっていてこれがビンから剥がしたくて水につけ込んでも容易に剥がれず
ラベルもふやけずに困ったという経験に基づきます。

以下に今回の実験の経過と考察などを記載します。ご覧になった方の何かのお役に立てば何よりです。

今回のシール全景。
サイズはおよそ100×85o。
銀色の下地の上に白、黒、赤の
三色で印刷を重ねています。

猛烈に端折っていますがシールの裏の
糊を除去したところ。絵面的には後の方の
紙の層を剥がす様子とかなり似ているので
それを参考にして下さい。
で糊剥がしの方法ですが、裏紙から剥がした
シールにスポイトで模型用ラッカー系塗料の
溶剤をかけてやり平らで溶剤に強い台の上で
爪楊枝の側面で軽くしごいて寄せるようにして
除去してやります。これでほとんど除去
出来ますが、最後に溶剤で濡らした状態で
指の腹などで表裏両面を優しく洗って
ティッシュなどでキレイにぬぐえば完了です。

表側。
まだ分厚い紙の層が残っているので
シワなどの心配はありませんが
糊の除去の時に凹凸があったり
汚れた場所で行なうと表面に傷が
入ってしまいます。銀色の部分は
特に表面の傷は目立ちますから
気をつけると良いでしょう。もっとも
最後の最後までシールの表面を
まったく荒らさずに作業できる人は
そうとう手慣れた人ということになると
思いますが…。

いよいよ紙の層を剥がしにかかります。
小皿に水を張ってシールを漬けます。
時間は数時間程度で良いでしょう。
中性洗剤を溶かした水でも試しましたが
時間にも剥がし心地にも差は感じられません
でした。

十分水を吸わせたら台の上に出します。
ここではプラ板のツルツルした面の
上に置いています。紙を剥ぐと相当に
薄くなるのでここからはシワや折り目を
付けないように慎重に扱う必要が
あります。

端の方から剥いでいきます。
爪楊枝先端の側面で軽くしごくように
表面をこすります。この時角から
中央に向けてでなく、中央から
角に向けてこすること。逆にこすると
角の部分が折れたり傷んだり
しやすくなります。紙の層が
こすり取れると表面の銀色の層の
裏側が露出します。

剥がした部分を足がかりに少しずつ
無理せず広げていきます。小さな
シールならそれで良いのですが
このサイズだとだんだん無理が
出てきます。

そこで紙の層の厚みの半分くらいを
先に剥いでしまいます。くれぐれも
シールを傷めないように慎重に。

薄くなった層を剥ぎ進めます。
表面の水分が切れてきたら
適宜足すようにします。
しごく時にはシールを張る方向に
しごくこと。たるませる方向に
しごくとたちどころに「クシャッ」と
シワになります。

ひととおり剥がせたら水気を足して
指の腹などで軽くなでてお掃除。
そのあとたっぷりの水につけて
ゆすぐのも良いでしょう。ただしこの
状態になったシールは非常に
傷みやすいので取り扱いには慎重を
期す必要があります。爪楊枝で
ヒョイと真ん中から持ち上げようとすると
このサイズのシールだとそこから
二つに曲がって折り目になったりします。
例えばこんな風にカッターの刃など
幅広の物で丁寧に持ち上げてやると
良いでしょう。工夫して下さい。

準備完了。表面の層が極薄アルミ箔の
ように純粋に金属なのか樹脂に金属を
蒸着した物なのかは分かりません。
品物としては前記したように非常にデリケート
ですが印刷はなかなか頑丈で模型用塗料の
溶剤で溶けたり簡単に削れてしまうことはありません。
ただしそれにも限界があって作業をしくじって
リカバーのために表面をシンナーでしつこく
拭いているとだんだん傷んで剥がれてきます。
これはシンナーのせいというより物理的な
限界と感じられます。

事前にちょこっと行なった比較。
左は無加工、右は裏を剥いだもの。
試験片は5o四方程度の大きさです。
剥いだ物は非常に薄く、デカールにも
負けない薄さになっていると感じます。

貼りました。糊気の取れたデカールを貼る時は市販の
マークフィッターや薄めた木工用ボンドが
定番ということでここでは手元にあった木工用速乾
ボンドを水で薄めて使用しました。具体的な貼り方の
コツはデカールと同じなので各自で調べて下さい。

さてここでひとつ問題が起きました。このホイルシールは伸縮性が全くないので
三次曲面に絶望的に追従しません。未加工のシールなら厚みがありますから
三次曲面にピッタリ張り付くかは置くとして簡単に皺が寄ったりはしないのですが
ヒラヒラになったこの状態ではバカ正直にシワを生じてしまうのです。残念ながら
これはどうにもならず生じるシワをできるだけ目立たない場所に追いやるとか
あらかじめシールに切れ目を入れて部分的に重ねて貼るとか重なる部分を除去して
おく等の手立てで対処するしかないでしょう。デカールなら軟化剤を用いるとか蒸しタオルで
押さえるなどの手がありますがホイルシールでは有効とは思えません。
他にこのホイルシールの留意点としては下地の凹凸をかなりはっきり拾うので
貼る時にゴミなどを挟まないように注意することです。さて、あとはしっかり
乾かして模型用塗料のクリヤーをかければ良いはずだったのですがここで更に
思いがけないトラブルが発生します。

とりあえず1日乾かしてシールが動かないのを確認してから何度か軽くクリアを吹き
早めに乾燥させようと食器乾燥機で5分ほど加熱してそのまま放置しておいたら…
「随所にシールの浮きが生じてしまいました。」
直径1〜数ミリ程度のおおむね丸い範囲があちこちでポコッと持ち上がってしまっているのです。
温めたせいでシールの下に点々とゲル状の塊として残っていた糊にまだ含まれていた水分が
気化して膨らんでしまったのでしょう。デカールの基材を通して水分がどの程度蒸発していくかは
分かりませんがデカールフィットが効くくらいですから多少は水分も出て行くのだろうと思います。
しかしホイルシールについてはそれは期待できません。一番乾きやすいシールの縁の部分が乾いて
密着してしまえばその内側の水分はいつまでも残ることになりますし水分が抜けないということは
糊も乾かず下地とシールは完全に接着しない…というくらいのことは想像はしていたのですが
完全乾燥しないまでも粘着してくれればあとは何とかなるだろうくらいに思っていたのです。
少々甘すぎました。浮きを生じた場合の対処はデカールでは針で突いて空気を抜いて薄めた接着剤を
その穴から入るように塗布して乾かし直すということをするので今回もそれで対処しましたが
箇所が多い、既に数度クリヤーの上掛けをしてしまった、シールの下のゲル状のボンドを完全に
追い出したり乾燥させるのは無理、リカバーの作業自体にそんなに慣れていない…等の理由で
修正できた箇所は限られたものになってしまいました。せめてクリヤーを上掛けしていなければ
水の中にドボンして仕切り直しという選択肢もあったでしょうが今更どうにもなりません。

残念な結果になってしまいましたが接着剤を選べばまだ希望はあるのではないかということで
今後のためにあらためて実験することにしました。水性以外の何かということで候補として
タミヤエナメルのクリヤーやソルベントで薄めたペーパーセメントを思いつきましたがとりあえず
モデラーに馴染みのありそうな前者で試すことにしました。

左は薄めた木工用ボンド、右は溶剤でわずかに
薄めたタミヤエナメルのクリヤーで貼った物。
こうしてみると木工用ボンドの方は既に凸凹が
あります。思うに保存している状態でボンドには
既にゲル状の塊が多数含まれており水で溶いても
その塊が完全に溶けずに残っているのかも
しれません。タミヤエナメルの方は全体が均一
なのでそんなことはなく平らに貼れています。
ここで慌てずしっかりと乾かすことが肝心なの
でしょう。

やっぱりウイングだけ手間と事後の荒れを
承知でシールを貼り直すことにしました。
すべては今後のための実験です。
結構分厚くクリアの上掛けまでしてあったの
ですがシンナーと平筆で洗い落とした後
水につけて少しずつボンドを溶かして
シールを剥がしました。その後ペーパーがけ
等で下地を整え艶有りのブラックを吹いて
しっかり乾かし、テストと同様のエナメルの
クリヤーで貼りました。綿棒などでしっかり
抑えて余計なクリヤーはできるだけ押し出す
ようにしました。貼って剥がしてを繰り返して
表面は大分荒れてしまいました。耳の白い
丸の中の点はリカバーのために針で突いた
穴。また縁のあたりの黒色印刷があちこち
傷んだり剥がれてしまっています。

もう一枚。こちらの方がダメージが
大きいです。印刷が剥がれたり
削れてしまい、縁も傷んでいます。
リタッチも考えましたが今後の資料として
このままで仕上げることにしました。
皮肉ですが見方によってはAFVなどの
ダメージ表現のようにも見えます。
もちろんミニ四駆には不必要だし
ふさわしくないとも思いますが。

以下、ラッカー系クリヤーを上掛けして磨いた最終状態のボディの画像を2枚。

艶のある部分に段差がないのが
分かります。比較するデカールにも
よるでしょうが、デカールを貼っての
研ぎ出しと手間はそう変わらないと
思います。

ほぼ全体。
クリヤーはきれいにかけられても
シールを貼った段階で出来てしまった
シワ、浮き、汚れ、傷などのアラは
隠れてくれません。 ホーローの鍋の
表面と同じでクリヤーの層の底に
シールが沈んでいる感じです。
シールと下地の間に段差はなくても
パッと見で極薄のシールが貼ってあると
いうのは両者の表面質感の違いで
見え見えだったりします。
クリアがけでのゴマカシが効かないので
最終的にきれいに仕上げるには
すべての段階で失敗なく美しく作業する
必要があります。

まとめです。
結論として、ホイルシールの裏面の糊と紙の層を剥がして薄くして貼る手は十分使えます。
うまく貼ればデカール並みの仕上りに出来ます。ただしそのためには普通のデカールと
糊付きアルミ箔の両方をきれいに貼れる知識やスキルが不可欠です。ごく小さな物ならまだしも
そこそこの大きさの物を不案内な人間がいきなり貼っても不満足な出来になるのは
覚悟しておいた方が良いでしょう。

ついでに。
・糊は木工用ボンドよりタミヤエナメルのクリヤーがおすすめ。
・クリヤーを厚くかけてもシールが貼ってあるというのはどうせすぐ分かってしまうので
 表面にテカテカの艶まではいらないなら軽く艶の統一と表面保護のためのクリヤをかけるだけで
 終わりにしておくのが精神衛生上良いと思います。
・今回はかなり残念な仕上りになりましたが何度もチャレンジしていれば
 手慣れていくタイプの作業だと感じました。
・エナメルのクリヤーで貼ったシールに本当に浮きが生じないかは時間経過や
 環境の変化などで違いが生じると思うので確約は出来ませんが、丁寧な作業と
 それなりの乾燥時間を取ったところ今のところ悪い変化は見られません。
 理屈から考えても木工ボンドより安心感があると思います。


何かもう1個くらい今回程度の気軽なアイテムを作ってみたいですね。