[フレーバー入りイチゴジャム2種] (2016/4/7)

これまで色々なジャムを製作してきましたがその主目的は主に「実験」であり
出来たジャムを食べるのは言わば試食に過ぎなかったとも言えます。
今後も実験的な活動は続きますがもうひとつの路線として「他の人に
食べてもらうに足るジャム」という路線も立ち上げたいと思います。
実験は実験、エンターテインメントとして面白ければ良しだったのですが
それ故に出来上がったジャムの多くは市販のジャムに較べて質が低い
ものでした。しかしいつまでもそれではいけない、私の好みやジャムに対する
考えを反映したもっと質の高いものを求めるべきだという新しい考えに則り
今回のジャム作りに臨みました。

コンセプトとしては
1.貧乏人を排除しない高級ジャム
2.身近な材料で自分で作れるジャム
3.用途としてはパンなどに薄く塗り広げられるジャム

これらを元に今回は
・手軽で失敗の少ないイチゴジャムとする
・高級感を演出するフレーバーを加える
・失敗の無い基本的なイチゴジャムの作り方を確立する
…といった要素を設定しました。フレーバーはいろいろ検討しましたが
今回はカルダモンとペパーミントを選びました。どちらもイチゴジャムに
組み合わせられる素材ですが私の好みや狙いに合うかはやってみなければ
分かりません。理想的なレシピが出来るまで、あくまで今回も実験です。


素材。とちおとめです。1パック250円くらいのお買い得品ですが
粒もそこそこで香りも高く品質の劣るものではありません。


パンにスムーズに塗れるためには皮や果実の形が残っていては邪魔です。
そこで八つ切りにしたイチゴをフードプロセッサであらかじめ砕きます。
形のまま炊きながら潰してもそこそこ崩れてはくれますが素材の質や
作り方によって口当たりの悪い皮が残ることはあり得ます。今回は
失敗を呼ぶ要素はあくまで排除します。


こんな感じに。こうして砕いてしまうならあらかじめ砂糖をまぶして
水分を出して、などと考える必要はありません。ちなみに砂糖をまぶして
表面近くの水分だけを浸透圧の差や砂糖の保水作用で急激に吸い出すと
その時点で素材外部の表皮がしまって硬くなり炊いた後に口当たり悪く
残ってしまうことがあるようです。ジャムを炊く時最初に一度に砂糖を入れず
何度かに分けて入れるというやり方が紹介されていることがありますが
これもそういう問題を起こさない工夫なのでしょう。他に水分が少ないうちに
どんどん砂糖を入れると焦げやすい等の理由もあるかも知れませんが。


鍋に移して炊き始めます。とろ火でおだやかに炊ける土鍋も用意
しましたが、今回はこれだけシャブシャブだし目を離さずに常時
かき混ぜるのでいつものステンレス鍋を使いました。一応沸騰するまで
砂糖は入れず、沸騰したら何度かに分けてグラニュー糖を加えました。
素材重量は約240グラム、グラニュー糖は80グラム。約33%です。
火は常時弱火。一応ポコポコと泡が上がる状態を維持しつつ炊きます。


上がってくるアクはもちろん取ります。ある程度アクを取ってから
砂糖を加えていきました。


多少緩いあたりで一旦火を止めます。ゲル化の決め手は糖度と酸度と
言われますが今回の糖度は33%、多少に詰まってもそれほどは
上がりません。またイチゴの場合ただ煮詰めるだけでもどろっとは
必ずしてきます。とはいえ一応ジャムらしく酸味も加えますが、今回は
いつものレモン果汁でなくクエン酸を小さじ半分加えました。レモンには
レモンの香りがあるのでその余計な香りを付けないためです。
また聞きかじりですがペクチンは酸性の環境で加熱されると分解しやすい
らしいので酸味は炊きあがる直前に加えてとろみが出たら完成と
するのが良いとする資料もあります。本当かどうかは実証してみないと
分かりませんしこの手の話は素材や作り方の違いでまた結果が様々に
違ってきそうなので鵜呑みはしない方が良さそうに感じます。
さてここまでで基本のベースとなるイチゴジャムができました。


フレーバーその1、カルダモン。ショウガを爽やかにしたような
香りがします。バニラやカタバミのように鞘の中に種が入っています。
種は直径2ミリくらい。今回は鞘1つ分の種をスプーンで潰して
半分に分けたベースのイチゴジャム(つまりパック1/2分)に投入して
5分ほど炊きました。固くなりすぎそうだったら適宜水でのばしながら
炊きます。


こちらはペパーミント。生の葉を使いました。これもパック1/2分の
イチゴに相当するジャムに画像の通りの量を入れて5分ほど炊きます。
完成したら葉は取り出しました。


完成。左がペパーミント、右がカルダモン。見た目は同じようなもの。
カルダモンの方が色が濃いのは炊き込みの違いです。1パックの
イチゴでできるジャムというのはそう多くはないですね。


上から。冷やして固すぎる時は水をわずかに加えて練ると良いです。
冷蔵庫で冷やしたところどちらも結構固めになったので具合を見つつ
水を加えて適当な緩さになるまで練りました。これで一応完成です。

さあ試食です。

まずはカルダモンの方です。鼻を近づけた時の香りはあまり強くありません。
ソルトクラッカーに薄く塗って囓ってみるとなるほど悪くはありませんが
口に含んだ時の香りが強いとやや薬草っぽい感じがするかもしれません。
カルダモンには爽やかな香気もありますがショウガのような薬臭さ(漢方では
ショウガはショウキョウとかカンキョウの名で一般的に使われています)や
舌に刺激のあるスパイシーさがあるので多く入ると嫌味な味になりそうです。
何かが入っているけれど何が入っているんだろう、程度の隠し味にしてやると
良さそうです。パック半分のイチゴにカルダモン1鞘分を入れましたがこの
6〜7分くらいで良いかも。あるいは切れ目を入れた鞘1個を投入して
完成したら取り出すというのも良いかもしれません。逆に味にスパイシーさや
パンチが欲しければ粒をそのままか若干潰し加減にした程度で今くらいの
量を入れると良いかもしれません。私の好みとしては今回のはちょっと
カルダモンの香りが前に立ちすぎたかなという感があります。

次はペパーミントです。鼻を近づけるとミントの爽やかな香りがふわりと
してきます。これもクラッカーに延ばして食べてみると味も爽やかです。
生のハーブを煮込んだので変な渋みが出ると嫌だなと思ったのですが
そんなことはありませんでした。量もこの程度で適切だったようです。
しかしこの爽やかさは主食のパンにバターなどと一緒に塗った場合
どの程度合うか一考の要がありそうです。この味は決して悪くはないの
てすがどちらかというとデザートとかバーのドリンクなどに合いそうな
味です。おいしいのですが使い途を選ぶ味かもしれません。
実はあまり爽やかな方向に行きすぎたので甘い香りを足したらどうかと
バニラペーストをわずかに足して試食してみたりもしてみたのですが
これも良いのですが味が複雑になりすぎてますます好みや使い途が
狭まっていく感じの難しさがかえって増してしまいました。

結論としてどちらも方向性は分かったし加減も何となく知れてきました。
ただし香りがついたり、それが複数の素材によって複雑さが増すほど
汎用性が低下して効果的な使い途が限られていくということも分かりました。
用途をきっぱりと限定するのでなければ香りは隠し味程度に弱めに
しておく方が使い勝手の良いジャムが出来そうです。

あとは、今回の試食では気になるほどではありませんでしたが
使い方によっては種の量が多くてうるさい感じを受けるかもしれません。
何らかの手段で種を濃し取れる技法を見つけておく方が良さそうです。
この時に出来るだけジャムの量を減らさない工夫もしないとひどく
コストパフォーマンスが低下しそうだしあまり手間がかからないやり方に
しないと作るのや後の掃除も大変です。
それから見た目ですが塗り延ばすとむしろ濃厚な感じで良いのですが
瓶に入った状態だと色が濃く濁った感じで美しさにやや欠けます。
優先度としては味や食感に較べれば低いかもしれませんが出来れば
これもなんとかしたいところです。

ということで改善・調整したい点はいくつもありますが第一回の試作としては
十分だったと思います。今回の各一瓶をチビチビと食べつつ次の試作に
盛り込む変更点を詰めていきたいと思います。それに加えて別の
フレーバーも試していきたいです。候補としてはバニラで甘口に
仕上げてみるとかローズヒップでフローラルに仕上げるというのも
一案と考えています。
※これらのジャムの試作記事をアップしました。
「フレーバー入りイチゴジャム2種・その2」